2011.12.20 差別化の効能 ~「ナポレオン狂」の感想から~

関連書籍

併せてどうぞ!

「恐怖コレクション」阿刀田高
本書は恐怖についてのエッセイであると同時に、古今東西の傑作恐怖小説を知ることができる優れたブックレビューでもあります。怖いモノ好きな人にはもちろん、苦手な人がこれを読めば、駄作を看破し不必要に怖がらなくなる”審美眼”が得られるんじゃないかと思います。その上で怖い作品に出会えたとしたら、それはむしろ幸運と言えるでしょう。

2011.12.13 「ナポレオン狂」阿刀田高

師走も中旬となり、いつも以上にささくれ立っているタナカが今回おすすめするのは、ブラックユーモアの第一人者にして短編の名手である阿刀田氏の代表作です。不安や狂気を奇抜なアイデアで抽出した作品群は、ホラーとも怪談とも違う怖ろしさを持っていると同時に、どこかニヤリとしてしまう面白さをかねそなえているのはなぜか。いろんな意味で心配しているナリタとともに、恐怖の描き方とその楽しみ方についてあれこれ語ってみました。

関連書籍

併せてどうぞ!

「別人『群ようこ』のできるまで」群ようこ
ひとりのOLが作家・エッセイストになるまでの、アクロバティックな時期を綴った自伝的エッセイ。悶々とする会社生活から、超零細書評誌「本の雑誌」の黎明期を支え、ついに「群ようこ」と名乗るまでの日々を、美化しない本音でビシバシ書いているのが爽快です。椎名誠率いるあやしいおじさん達を女性視点で見られる珍しい本でもあります。

「トイレット」荻上直子
”ばーちゃん”は日本人。英語も通じないし、表情も読めない。それでも家族なんだ―。トロントを舞台にした、国や言葉を超えた家族のあたたかさを感じさせてくれる、いつまでも大切にしたい作品。引きこもりピアニスト、ロボットオタク、エアギター少女の三兄妹と”ばーちゃん”が囲む食卓は、家庭というもののひとつの理想像である気がします。タイトルの由来と、切なくもおかしいラストも大好きです。

2011.12.6 ”間”と”雰囲気” ~「かもめ食堂」の感想から~

ゆるやかながらも独特の世界観をもつ「かもめ食堂」。すっ、と心に届く作風を共有しつつも、小説と映画それぞれの特徴を生かした作品に仕上がっていることに感心するナリタとタナカ。文章と映像、登場人物とそれを演じる俳優といった違いだけではない、”間”や”雰囲気”をつくりだす要素とは何なのか?関連作品を交えながらその魅力に迫ります。

関連書籍

併せてどうぞ!

「フィンランド語は猫の言葉」稲垣美晴
1970年代末、まだ日本人になじみのなかったフィンランドに留学した著者が、戸惑いながらも言葉や雰囲気の奥深さに魅せられていく様をつづった面白体験記。表題はフィンランドの人が相槌を打つとき「ニーン、ニーン」と言うことから来ているそうな。ヨーロッパ圏の人々にすら難解なフィンランド語とは、そもそもフィンランドで暮らすとは?新鮮な驚きと発見に満ちた日々を若々しい文章で描く、フィンランド入門の決定版。

2011.11.29 「かもめ食堂」群ようこ

女流作家続きで今回は群ようこ「かもめ食堂」の紹介回をお送りします。北欧旅行から帰ってきたばかりのタナカですが、その旅行の際にちょうどフィンランドはヘルシンキを訪れていました。北欧の街並みの雰囲気に思いを馳せつつ、ほっと一息つけるようなハートウォーミングな物語を紹介します。2006年にこちらを原作とした映画も公開されましたのでそちらもあわせてお楽しみ下さい。

2011.11.22 優しく生きるとは何か ~「小暮写真館」の感想から~

『小暮写眞館』の帯には「数かぎりない伏線の終着駅 小説史上最高に愛おしいラストにあなたは何を思う、誰を想う?」とありますが、この物語で描かれる数々の伏線はそれぞれが人々の優しさのあり方と、それぞれが優しくあろうとするが故のすれ違いや摩擦を巡るストーリーを綴っていると思います。言いたいことをあえてぐっと飲み込む優しさ、誰かを傷つけようともあえて立ち上がって想いを吐き出す優しさ、約束を貫く優しさとあえて約束を括弧に入れる優しさ、誰かのためを想いあえてその人から離れようとする優しさと噛み付いても傷つけても一緒にいる優しさ、等々。今夜はそんな優しく生きることの難しさについてまたこの二人がああでもないこうでもないと各々の思いを語ります。

関連書籍

併せてどうぞ!

「ドロップ 1・2・3」鈴木光司
書籍と言えるかわかりませんが、これがタナカ家のトイレにある「日本一怖いトイレットペーパー」。

2011.11.15 「小暮写眞館」宮部みゆき

久しぶりに女流作家の作品を紹介します。ユニークな花菱一家が移り住んだ「写眞館」。そこから広がる様々な出来事が、人間の強さと弱さ、優しくすること、傷つけることを丹念に描き、かつ丁寧に収束していく構成が見事な、著者ならではの力作。「物語のすべてが詰まった700ページの宝箱」といわれるのも納得です。フリートークがやや長めになって申し訳ありません。

関連書籍

併せてどうぞ!

「クライマーズ・ハイ」横山秀夫(小説)/原田眞人(映画)
日本航空123便墜落事故を追って奔走する地方記者たちの新聞魂を描いた名作。御巣鷹山で失われた多くの命、それをどうやって伝えればいいのか、伝える意味とは何なのか―。登山家たちとは違った視点から描かれる山での生死と、命≒情報を伝えるという宿命に真っ向から立ち向かう記者達の姿は、まさに生き様を見せつけられるものになっています。ヤマト、ローレライに続き、堤真一の演技にもご期待ください。

2011.11.8 人間の生き様を描く ~「神々の山嶺」の感想から~

久々のナリタ大絶賛!上下巻の長さを感じさせない展開、圧倒的な描写力、そして「人が生きること」を問いかけるメッセージ性、これぞ小説といえる作品に出会えたことを喜ぶ二人。自分にしかできないことに気づいてしまったらそれを表現せざるをえないという人間の性(さが)、伝説的な偉業に隠された不器用な人間味など、それぞれの視点からこの物語の奥深さに迫っていきます。

関連書籍

併せてどうぞ!

「雑誌 日本語学 2011年11月号」
われらのナリタさんが雑誌に掲載されました!
第三章、言葉を巡る「何」と「なぜ」-生成文法の視点から-というタイトルで、福井直樹先生との共著になります。言語に興味がある人、ナリタさんに興味がある人、よくわからない人、とにかくみんなで書店へGO!

2011.11.1 「神々の山嶺」夢枕獏

今回ご紹介するのは夢枕獏の長編山岳小説「神々の山嶺」です。20年来の構想を余すことなく描ききった意欲作です。この作品以前もこの作品以降も夢枕氏は山岳小説を手がけておりませんが、特に彼はこの作品をして「書き残したこと・書き足りないことはありません。書きたいことはすべて書きました。どうだ、まいったか」とまで言い放っています。そんな唯一無二の、エヴェレストに挑戦を続ける男たちを取り巻く壮大なサスペンス・ドラマをどうぞお楽しみ下さい。放送最後にちょっと告知もございます。

関連書籍

併せてどうぞ!

「エッセイスト」玉村豊男
優れたエッセイとは何か、エッセイストになるためには、といった真面目な話から、原稿料、取材と経費、ストーカー対策などの現実問題まで、著者の波乱万丈の人生とその内情を赤裸々につづったエッセイスト入門書。ナリタの師であるチョムスキー先生に影響を受けたことなんかも書いてあります。こんなところでつながってたりするんですね。

2011.10.25 選択肢としての田舎暮らし・都会暮らし 〜「軽井沢うまいもの暮らし」の感想から〜

玉村さんの軽井沢うまいもの暮らしに羨望の眼差しを向けると同時に一社会人として都会生活を送る自らの日々を振り返るタナカ・ナリタ。それは何も自家栽培・採取や保存食・調理のあり方などの食生活の豊かさに限ったことではなく、隣人とのつきあい方や(積極的/消極的)自由時間のあり方など、生活のいろいろな側面に田舎暮らし・都会暮らしのコントラストが波及しているのだなと気付かされます。秋の夜長に今の自分が送っているものとは違う場所での生活に思いを馳せてみるのもまた一興ではないでしょうか。

関連書籍

併せてどうぞ!

「全日本食えばわかる図鑑」椎名誠
あっつあつのゆでたてスパゲティにバター、マヨネーズ、しょーゆをわっせわっせとからめて即座に食べる、という「シーナスパゲティ」を考案した著者が放つ、うまいもまずいも食ったもの談義。味やレシピにとらわれない、食った者にしか分からない憧憬と悔恨にあふれた五十篇は一読、いや一食の価値あり!(しかしなんでまた最初に「青イソメ・ゴカイ丼」なんて特別料理を・・・)

「Step by step」森高千里
ニッポン放送の同名番組で放送された内容をまとめた一冊です。多くは語りますまい。

2011.10.18 「軽井沢うまいもの暮らし」玉村豊男

風は涼しく空は高く、すっかり秋めいてきた今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。装いも新たにお送りする今回は、食欲の秋にふさわしい「うまいもの」にまつわるエッセイを紹介します。都会育ちで食通の著者が軽井沢で出会った、新鮮でシンプルなおいしい生活。四季折々の自然がもたらす大いなる恵み、それと共に生きる人々との交流などなど、驚きと喜びに満ちた田舎暮らし一年目の出来事をまとめた一冊です。著者自身によるレシピも収録。あー、おなか減ってきた。では皆さんも、よい食欲を!

2011.10.11 第20回 SFをたっぷり語ろうスペシャル

2週間のお休みを巻き返す勢いの長大な回でお送りする20回記念企画は「SFをたっぷり語ろうスペシャル」です。映画「ローレライ」と「SPACE BATTLESHIP ヤマト」の感想戦から始まり、タナカは「老ヴォールの惑星」の感想回(13回)から持ち越している宿題を表現する機会を伺いながら、そしてナリタはタナカのSF愛が堰を切って押し寄せてくるのをいまかいまかと待ちながら、話はいろいろな方向に進んでいきます。果たして2時間にも及ばんという長い議論の果てにタナカは彼のSF論を語り尽せたのか!どうぞお楽しみ下さい。

2011.9.20 第19回「ローレライ」樋口真嗣

映画原作の「終戦のローレライ」ではなく、あえて映画版の「ローレライ」を紹介したいと思います。第二次世界大戦末期、極秘に用意された潜水艦によって起死回生の大作戦に挑む人々を、斬新なアイデアを盛り込んで描いた意欲作。終戦を目前にそれぞれの思惑が交差しつつ、”大切なものを守ること”をつらぬく魅力的な人間描写は、一見の価値ありです。そして最近公開された映画版「SPACE BATTLESHIP ヤマト」との意外に多い共通点とは?最後までお楽しみください。